人は退屈に耐えられない【実験で判明】自ら電気ショックを選ぶ被験者

女性

みなさん電気ショックは好きですか?

おそらく電気ショックが好きな方は滅多にいないと思います。電気ショックを受けるという体験はまったく心地よくありませんし、もだえ苦しむほどではないにしても、注射か歯痛くらいの不快感があります。

しかし、この電気ショックを自ら受けるという判断をしてしまう状況があることが、実験でわかりました。

その状況というのが「退屈」です。

多くの人が、退屈よりも電気ショックを選んでしまうことが判明した奇妙な実験を紹介します。

目次

【実験方法】人は退屈に耐えられない

2014年夏、権威ある科学専門誌「サイエンス」に、心理学者8人による共著論文が掲載されました。容易な行動をする機会を与えられた人間の反応について考察した論文です。

著者たちが行った実験の一つでは、被験者となった大学生200人あまりに、10分もしくは20分間ただ静かに座っているという指示を出しました。

「頭の中でできるだけ楽しいことを考えていてください。用事やネガティブな事柄は意識せず、心地よい気持ちでいてください」と伝えます。

被験者からしたら、非常に簡単で気楽な心理実験です。静かに座って楽しいことを考えていればいいのですから。

ただし、これを行った研究者たちは、2つの要素を加えました。

第1の要素は、被験者を電気ショックの機械につなぐこと。最初にお試しとして電気ショックを味わわせます。

先程言った通り、電気ショックは注射か歯痛くらいの不快感があります。このことを被験者は先に体感しています。

それから第2の要素として被験者にこう告げます。

「思索しているあいだ、もし気が向いたら、この電気ショックを体感できます。でも、それは完全にあなたの意志次第です。あなたが決めて構いません」

実験結果

その結果、男性被験者の3分の2、女性被験者の3分の1が、少なくとも1回、多くが2回以上の電気ショックを選びました。

被験者の1人(男子学生)は、なんと190回も電気ショックを求めました。20分のあいだに、6秒に1回の頻度です。この学生は極端な例ですが、多くの人間は退屈よりは苦痛を選ぶことがこの実験からわかります。

全員、本番前に電気ショックの痛みを体験しているので、単純な好奇心でそうしたわけではありません。しかも数分前に質問票に記入したときには、電気ショックは心地よくないという感想を示しています。

それなのに被験者たちは、静かに座っているあいだに、あえて不快なショックに耐えることを自ら選んだというわけです。

考察

実験を行った研究者たちは、「ほとんどの人間は、何もしないより何かするほうがよいと考える。たとえそれがネガティブなことであっても」と考察しています。

少し大袈裟かもしれませんが、人生においても私たちは、ある程度の苦難を求めているのかもしれません。Googleの書籍検索で調べると、「人生をスムーズで容易にする方法」を指南する本は、現時点でも3万冊以上もあるようです。

恋愛、資産管理、キャリアアップ、人脈京成、現代の生き方、育児、体型、短期間で金持ちになる方法、プログラミング、などなどテーマは数えきれません。

人生は厳しい、でも苦難を取り除けば幸せで良い人生になる。と大体これらの本は示唆しています。

ですが、こうした本の大半は、もっぱら小さな悩みを解決するものです。本当に大きな苦しみに耐え忍んでいる人を対象としていません。また、人生は簡単なほうが幸せだという証拠もありません。

ある科学者もこう語っています。

「映画スターが虚しさを訴える話をよく聞きますよね。遊び相手にも困らず、レストランの支払いだって気にする必要のない生活なのに、なぜ不満を感じるのか、一般人には理解しづらいかもしれません。でも、勝ち続けるゲームなんて、ほとんどの人にとっては退屈なものなのです」

順風満帆な生活は表面的には魅力的に思えるかもしれませんが、その魅力はすぐに色あせます。この実験のように、人間は誰でもある程度の範囲で、敗北や困難や試練を必要としているのかもしれません。

だから貴重な時間を費やしてわざわざ難しいクロスワードパズルを解いたり、危険な山に登ったりするのです。イージーゲームな人生は退屈で耐えられないのです。

ずっと成功するとわかり切って過ごすよりも、試練や苦労、スリルを味わいながら生きる方が魅力的なのかもしれませんね。

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