突然ですが、部下があげた成果を評価するとき、あなたはどちらの言いかたで声をかけますか?
「四半期に入ってまだ1週間なのに、もうすでに目標の15パーセントが達成された」
か
「出だしはかなり好調だが、まだ目標の85パーセントが残っている」
どちらでしょうか?
内容は同じなのですが、いい回しが違いますね。
本記事を読むことで、社員の目標達成のモチベーションを高める方法を知ることができます。
人がもっている数字のとらえ方の特性を利用する、心理学的に有効な方法です。
社員のやる気を引き出す方法!目標達成のモチベを高める
冒頭に投げかけた質問の答えは、前者の「四半期に入ってまだ1週間なのに、もうすでに目標の15パーセントが達成された」の方です。
人間はすでに完了した作業にたいして、完了した数字の部分に意識を向けたほうが、作業への意欲が高まることがわかっています。
ですので、後者の「出だしはかなり好調だが、まだ目標の85パーセントが残っている」というように、まだ多く残っているほうの作業に意識を向けさせてしまうと、社員のモチベーションは下がってしまいます。
しかしここで気をつけたいのが、これは作業が初期(50パーセント未満)の場合です。
50パーセント以降のアプローチは後半で解説しますので、このまま読みすすめてください。
ちなみに、今あなたはこの記事の25パーセントを読み終えています。
なぜ、このような心理がはたらくのか、説得の科学を研究するM.マークとA.フィッシュバックはいくつかの、興味深い実験を行いました。
そのなかの一つを紹介します。
数字の心理を利用した実験結果
人気の寿司屋を舞台にした実験です。
ターゲット:約900人以上の常連客
企画:ランチを10回購入すると特典として1回無料になるプログラムに参加してもらう
その際にスタンプカードが渡されるのですが、客の半数はスタンプの押されていないカードを渡され、ランチを購入するたびにスタンプを押してもらえます。
購入するたびにスタンプがたまっていくので、客の意識はゴールに向かってどれくらい進んだかに集中します。これらの客を「達成度基準」グループとします。
残りの半数は、カードに最初からスタンプが10個印刷されており、ランチを購入するたびにスタンプが追加されるのではなく、穴あけパンチでスタンプが減らされていく方式です。
これらの客は、無料ランチがもらえるまでに、あと何個のスタンプが残っているかを意識することになります。こちらは「残り回数基準」グループと呼ぶことにします。
この実験のきもは、営業中の飲食店で行われたため、スタンプの増減は一定ではなかったことです。
たとえば、自分一人のランチしか買わなければスタンプは1つしか増えませんが、友人や職場の同僚のぶんも一緒に買うと、複数のスタンプが一気に増えることになります。するとゴール達成までの進みも早くなります。
結果
結果を分析してみると、自分の分か2、3個程度しか買わなかったことにより、初期の段階でスタンプの進みが遅かった人でリピーターになりやすかったのは、スタンプが増えていく方式の「達成度基準」のグループでした。
いっぽうで、初期の段階でスタンプの進みが早かった人は逆の傾向があり、スタンプが減っていくほうの「残り回数基準」のグループでした。
なぜこのような違いが生まれたのでしょうか。
これは記事の前半で説明したように、目標を達成したくなったのは、より小さいほうの数を意識したときだったからです。
研究から考える実践方法
この研究から分かるように、相手(あるいは自分)の意識を、最初のうちは大量に残っているほうではなく、すでに終わっている小さな部分に意識を向けさせるほうが、目標達成のモチベーションは上がります。
理由のひとつとして、例えばある行動の達成度が20パーセントから40パーセントに変化すれば、進行の度合いが倍になったということになり、効率的な行動をとっているように感じることができます。
しかし対照的に達成度が60パーセントから80パーセントになった場合は、同じ20パーセントの変化でも、達成度全体からみれば4分の1にすぎません。
50パーセント以降のアプローチ
説明したように、人間は小さいほうの数を意識させたほうがモチベーションは上がります。
ですので、達成度が50パーセント未満の場合は「四半期に入ってまだ1週間なのに、もうすでに目標の15パーセントが達成された」と声をかけるほうが、より心理に影響を与えることができます。
しかし部下や社員の目標達成度が50パーセントを過ぎたあたりから、かける声は変わってきます。
50パーセントを過ぎれば「目標の80パーセントが達成された」というよりも「目標までは、あと20パーセントを残すのみとなった」といったほうが、効果的にモチベーションを引き出すことができるのです。
さて、この記事も残すところあと20パーセントとなりました。
目標達成度をパーセンテージで表す
目標達成を促したい人にこの方法で声をかけるのと同時に、さらに応用プランも紹介しておきましょう。
様々な応用プランはありますが、そのひとつを紹介すると、部下や社員に影響を与えたりスキルアップを促したいのであれば、従業員個々のスキルアップ・プランにこの方法を設ける方法も有効ですね。
スキルアップ・プランに掲げられた目標にたいする達成度をパーセンテージで表して、達成度が50パーセントを超えた時点で、達成までの残りの部分へ強調点を切り替えるのです。
この小さな工夫で、部下や従業員の意識は小さな数字の部分に向けられ、その成果は上がるはずです。
人がもっている心理的な特性をうまく利用すれば、様々な場面で応用がききます。
ぜひ明日から試してみましょう。